書評『教室が、ひとりになるまで』

読みました。

浅倉秋成先生の作品。この先生の小説を読むのは初めて。

SFの青春モノミステリー。ミステリーというと犯人は誰なのかを考えながら読むのが普通ですが、この小説は割と序盤で犯人が明らかになり、犯人がどうやって犯行に及んだのかというトリックを推測するのが主眼。

結論としては、面白かった。

が、中途半端に青春要素を入れてしまっていて、純ミステリーと青春モノとどっちつかずの感じになってしまっている感は否めなかった。

そもそもこの小説は、約300頁と長編小説にしてはやや短め。

ミステリー要素と青春要素と、どちらも骨格はしっかりしているのでもっと腰を据えて、分量が二倍くらいになってもいいので両方とも書ききれば、不完全燃焼感が消えたのではないかと思われる。

例えば犯人が犯行に至った動機、それに共感してしまう主人公の価値観。どちらも説得力があってそれ自体にはとても共感ができるが、

なぜその動機を抱くに至ったのかの経緯や、事件解決後の犯人や主人公の歩むことになる人生を、もう少しじっくりと見てみたかった。

これは単なるミステリー小説ではなく、青春モノだから。青春モノというのは、やっぱり主人公たちの青さと、彼らの精神的な成長に醍醐味がある。自分自身の学生時代を思い返してみてもそうだけど、若い頃の考え方や言動というのは、それ自体を切り取って観察してみると、とても「薄っぺらい」。自分自身で振り返って、恥ずかしくて布団にくるまって「んー!」と叫んでしまいたくなることもある。

だけど、その薄っぺらくて考え無しの言動を、後の人生で自分自身でどう評価したり、どう意味付けをするかによって、その後の本人の人生でとても重い意味を持つことがある。

 

人気の作家先生のようなので、また別の本も読んでみたいと思います。

夏は、涼しい部屋での読書が捗りますね。

 

 


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