『東京』への尽きない憧憬

東京が好きだ。

生まれて初めて東京という場所にやってきたのは、中学校3年生の修学旅行。

たしか、4泊5日の旅程だったと思うが、その前半を横浜で、後半を東京で過ごしたと記憶している。

バスで都心に入ったとき「これが東京か!」と内心興奮していたのをいまでも鮮明に思い出す。

とくに、バスが渋谷のあたりを通りかかったとき、車窓から見えた名前も知らない高校の校門の風景は忘れられない。

地元の新潟県ではおよそあり得ないほど洗練された(感じに見えた)制服を着て、「東京の高校生ライフ、満喫してま~す☆」というムードを漂わせながら校門をくぐる高校生たち(全員が美男美女に見えた)。

テレビドラマなどでよく見る「東京の高校生」と結びつけながら、「東京やっぱりすげー」と感動していた。

とにかく『東京』は、格好良かった。

 

映画『君の名は。』では、主人公の三葉が、同じく主人公の滝君の身体を借りて、あこがれていた新宿の街を初めて歩くシーンがある。

新宿のごみごみした街並み、真っ直ぐにはとても歩けない雑踏。その全てが、あこがれで美化されて、輝いている(実際、新海誠監督の描く風景描写そのものも言いようもないほど美しい)。

まさにあのシーンで(おそらく)三葉が感じていたことを、自分も当時感じていたのだろうと観ながら思った。この映画は全編好きだが、このシーンが一番好きだ。

ちなみに、とても似たような理由で、椎名林檎の歌も好きだ。彼女も地方出身である(九州かどこかだったか)。同じ地方出身として、彼女が(特に初期の頃)新宿の歌舞伎町や、丸の内や、いわゆる『東京の街』をよく曲の舞台にしていた気持ちはとてもよくわかる(勝手にわかったつもりになっている)。さらにちなみに、大学生の頃のアルバイト先で、椎名林檎の元カレ(だったと主張している男)と会ったことがあった(なお、元カレに過ぎず、元夫ではない)。

 

大学進学のために東京に出てきてから、10年。

「憧れ」だった東京が住む場所に変わっても、やっぱり「憧れ」で始まった東京は、今でも「憧れ」のまま。これはこの先も変わらないと思う。

そういった意味では、自分は一生、例えこの先死ぬまで東京に居続けたとしても、いつまでも「おのぼりさん」なのだろう。

 

「タワーマンションに住みたがるのは、東京出身の金持ちよりも、地方出身の小金持ちが多いんだって」

以前、ある人に聞いたことがある。

なるほど、と思った。そして、「自分もそっち側の人間だ……」と思った(し言った)。

 

田舎者が『東京』が好きなのは、まさにそういう「東京にしかなさそうなもの」があるからだと思う。

(勝手な憶測だが)東京出身の人間は、むしろ新宿とか渋谷とか六本木の喧騒が嫌いだろうと思う。

しかし自分はどれも、というか人がたくさんいて、新潟にはなさそうな店がたくさんある場所はどこも、大好きだ。「東京に居る」と感じられるから。

 

大学生の頃ならまだしも、大人になった今、友人に突然「なあなあ、東京ってどれだけ長い間住んでも『あこがれ』のままじゃね?」とわけのわからないことを話しかけるわけにもいかないので(弁護士はとてもコミュ力が求められる職業である)、なかなか人と共感し合える感情ではないと思うが、いつか誰かと、語り合ってみたいと思っている。

 

 


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